私と田中君と残業

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 私はいつも通り出勤した。いつも通り、事務を淡々とこなした。今日も残業があった。  夜、小腹が空いたなあと思いながら、残業をしていると同じく残業をしている田中君に話しかけられた。 「残業、お互い大変だね」 「本当にそうだね。なんだかお腹が空いちゃった」  田中君がぼさぼさの頭をかきながら、なんだか照れ臭そうにカップうどんを差し出した。 「伊藤さんも残業なのを知っていたから買っておいた。良かったら食べてね」 「気が利くね。ありがとう」  私は田中君の頭をじっと眺めながら、うどんを食べて、少し元気になり残業を無事に終えた。  翌日、いつもと同じく出勤した。今日も残業になった。なぜか昨日と違って髪が綺麗に整っている田中君に声をかけられた。 「伊藤さん。今日もお互い残業だね。お疲れ様」 「田中君もお互い大変だよね。やっぱり小腹が空いてしまう」  田中君がビニール袋からカップ蕎麦を取り出した。よく見ると田中君は夜になって顎髭が伸びていた。 「さっきコンビニに行ったら売ってたから、ついでに買ってきた。良かったらどうぞ」 「昨日に続いて悪いね。ありがとう」  私は田中君の顎髭を眺めながら蕎麦を食べて少し元気になって、残業を片付けた。
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