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裏山公園は、かくれんぼをして遊ぶのに最適な公園だった。
まず遊具が多い。ゴミ箱も多いし、木も多い。小さな裏山まで含めると隠れる場所がたくさんあって、探す方も隠れる方も結構高いレベルを要求されるのだった(だからこそ暗黙の了解ってやつで、低学年の子は裏山公園のかくれんぼになるべく誘わないことになっていたのだが)。
メンバーは大体固定。
まず、リーダーのタキくん。彼が参加しないことはまずない。裏山公園の隣にある神社の神主さんの息子で、“俺も将来神社継がないといけないのかなーめんどくせー!俺はバンドマンになりてーのに!”とぼやいていたのをよく覚えている。長身でイケメン、女の子にも大層モテた。まあ、鬼ごっこの時の追いかけ方や探し方は、結構えげつないものがあったのだが。
それから、タツミくんとたつのちゃん。男の子と女の子の双子。実はどっちが兄でどっちが姉が僕は最後までわからなかった。本人たちは毎日ジャンケンで、どっちが兄なのか姉なのかを決めていると言っていたからだ。彼らは小柄ですばしっこくて、どっちもかくれんぼより鬼ごっこの方が得意だった。というか、彼らはお互いの考えていることがなんとなくわかるようで、片方が鬼になるともう片方がソッコーで見つかってしまうというのもあったのだが。
そして、めいこちゃん。ツインテールが可愛くて、当時僕にとってはちょっと気になる女の子だった。かくれんぼが一番うまいのは、このめいこちゃん。かくれんぼは僕を含めたこの五人が最低人数で、多いと十数人で盛大に行われていたのだが――まず、このめいこちゃんが一番最後まで見つからないのだった。
僕達のかくれんぼは、一人見つかると見つかった者も鬼になるルールで、最後まで見つからなかったら勝ちというルール。つまり、一番最後まで隠れている子は、複数人がかりで探されるので見つかりやすいのだ。にも拘らず、めいこちゃんだけは日が落ちるギリギリまで見つからないことがほとんどなのだった。
「ねえめいこちゃん。かくれんぼのコツってあるの?いっつもかくれるの上手いじゃん」
ある時僕は、めいこちゃんにそう尋ねたことがある。するとめいこちゃんは、苺の髪飾りを揺らして“そんなことないよ”とちょっとしょんぼりした顔をしたのだった。
「だって、結局わたしも見つかっちゃってるもん。本当は、最後見つからなければ勝ちなのに」
「でも、いっつもギリギリまで発見できないし、凄いと思うな。僕も頑張りたいから、コツがあるなら教えてよー」
「うーん、そうだなあ」
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