街なかでホールド・ハンズ

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街なかでホールド・ハンズ

勉強を頑張ったり 部活動を頑張ったり 未来図を描いたり 進むべき(みち)を決めたり おしゃれをしてみたり 友情を深めてみたり 思いつくかぎりのことをしても 常に私は 慢性的な不足感に(あえ)いでいた 朝は昇る陽を見つめ 夕は沈む陽を見つめ 夜は月と星を見つめ すべて時の音を聴き 何の不足に喘いでいるのか 私にはそれが分からなかった 確実に前進しているのに 確実に立ち止まっているような 形容しがたい淋しさがある 陽に月に 星に時に 手を伸ばしても掴めない何か そんな日々の中で 私は一つの恋を知り その想いが膨らんでいくさまを 客観的にも主観的にも眺めた 私を揺さぶるこの(ぬく)みを 心に留めようとするほど 触れたくて戸惑うばかりだった ある日 街なかであなたに手を握られた そのときに初めて 慢性的な不足感から 直情的な充足感へと変化した ついにたどり着いたと思った 消せなかった私の不足感は ただ一つ あなたの手を求めていたのだと 瞬間に涙があふれ 胸の中に広がった新たな想い ただ手をつなぐ それだけで私はあなたに 信頼の二文字を見た ただ手をつなぐ それだけで私はあなたに 未来を託せると思った 欲しかったのは、あなたの手 私はようやく 不足感に悩まない 本当の自分を見つけられた
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