カネナルヘビ

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 ***  頭の中身がすっからかん。毎日楽しいことだけ考えていればいいや、な楽天的な性格の姉である私。それに比べて小学校六年生の弟は、何もかもが私と正反対だった。  顔はお母さん似で、男の子にも関わらずすこぶる美人(と言ったら本人は渋い顔をするが)。成績は学年トップだし、運動神経も悪くない。ちゃらんぽらんで陽気な私と違って非常にクール、何をするのも冷静沈着。はっきり言って小学生離れしている。  あと、外に遊びに行くのが好きな私と違い、とにかく一人で本を読んでいるのがスキな物静かな性格。文字通り、似ているところが何一つとしてない。  けれど多分、異性の姉弟なんて、似ていない方が仲良くできることも少なくないのだろう。昔から姉弟仲は悪くないという自負があった。本を読んでいる時にこうして雑談を持ちかけても、まず無視されることがない程度には。 「カネナルヘビのニュースは俺も知ってる。学校でも持ち切りだったし。●●県ホシハタ村で見つかった新種の蛇で、金ぴかに光ってる。目は赤くて、サイズは小型。見つけたのは村役場職員の男性で道を横切ったと証言。村は、発見者に賞金を出すから探すのを手伝ってくれ、と全国的にアピールしていて、最近は村にわんさか人が集まっている……」  まあ、そこまでは私も知っている。たった今ニュースで言っていた内容とほとんど変わらない。しかし。 「それでなんで“死ぬかもしれない”になるの?」  これがわからない。  私ならともかく、弟は不謹慎なジョークを言うようなタイプではないのだ。よく知りもしない村を貶めるようなことなど、軽い気持ちで言うはずがないという信頼があった。 「勿論根拠はある」  文庫本をテーブルの上に置きつつ弟は言った。 「まず、この村は……深刻な過疎化が進んでいた。さっきニュースでも言っていたように、村おこしのイベントを考えているところだったわけだ。今回の新種の蛇発見のニュース、村おこしにはぴったりだと思わないか?賞金も出るって言っているし、人もわんさか集まってる。観光収入、とんでもない額になってるだろうな」 「ああ、それは……確かに」 「過疎化が進んだ村っていうのは若者がどんどん減っている村のはず。それなのに、蛇が発見されてからたった一週間で、こんなにも全国的にニュースが広まっている。ということは、情報をものすごく積極的に拡散しているってことなんだ。SNSや口コミ、マスコミの力も使って盛大に。そこまでして全力で話を広めるからには、当然メリットがある。賞金百万円なんて額、小さな村役場が出すお金としては安いものではないはずなのにね」  なるほど、そこまでして蛇を捕まえたいか――もしくは蛇を餌にして、人々をおびき寄せたかったということだろう。  見つけた人には百万円。百万円という額は、物価が上昇している現代においてもけして安い額ではない。興味を惹かれる人も、きっと少なくはないはずだ。
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