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「よくよく考えたら、YouTubeにもPVっぽいのまで出してるもんね。あれ絶対外部に委託してるし。……なるほど、村おこしのためって考えると納得かあ」
ということは、と私はため息交じりに言う。
「つまり、蛇なんて本当はいなくてえ。客寄せパンダとして、話をでっちあげたってこと?」
「俺は最初、そう思ったんだ。でも、最近それも少し違うんじゃないかと思い始めてる」
「というと?」
「ネットとかニュースで、インタビューに答えている村の人が何人か出て来たけど。“今は村の外に住んでいる、元々は村の住人”って人がやたら多くないか?」
「あ……」
『カネナルヘビの体長はおおよそニ十センチほど、文字通り金色に輝いているとのことで……。現在は隣町のご家族のところで暮らしてらっしゃるという、ホシハタ村の職員、会沢さんにお越しいただきました。会沢さん、よろしくお願いいたします』
確かに、あの会沢、というおばあさんもそのような紹介がされていたような。でも、彼女は結構な高齢者だった。家族と同居した方が生活面で安全というのは、わからないことではないのだが。
「さっきの会沢さんっておばあさん、別の局のインタビューにも答えてたから知ってる。彼女が家族のところに世話になっているの、一週間くらい前からなんだ。つまり、カネナルヘビが発見されたくらい」
テレビの中では、リポーターが会沢という女性と別れ、村の入口まで歩いていっているところだった。高い石の塀で覆われた門のようなものが見えてくる。まるでお屋敷の敷地か何かのように、入口に立つ石柱に“ホシハタ村”という文字が彫り込まれている。
「さっき“ホシハタ村職員”って紹介されていただろ。元職員じゃなく、現役職員。だったら仕事上は、村で暮らした方が通勤に便利なはずだ。それなのに、一週間前から急に家族のところに身を寄せているのは何でだ?」
「言われてみれば……」
「で、そうやって不自然に、一週間前から村を離れてる職員の人が少なくない。でもって、村を離れていない人達はインタビューに答えている時、みんな同じ格好。分厚い長ズボンに、長靴なんだ。このクソ暑いのに」
それは知らなかった。確かに、今は七月。長ズボンに長靴はかなり暑くて大変だろう。
そして弟が怪しんでいるからにはそれは、“農作業のため”なんてものではないのは明らかで。
「もう一つ、おかしなことがある。……蛇はまだ捕獲されていない。目撃情報があっただけ。その目撃情報っていうのが、職員の足元をするるるる、と滑りぬけるように通り過ぎていったというやつなんだけど。……真昼間の、真夏のコンクリートの上だぞ。蛇にとっては蒸し焼きになりそうなくらい暑いと思わないか」
「確かに。よくそんなアチアチのところ通れたよね。ミミズなんかよく干からびてるのに……って、ん?実はそれ、結構変ってこと?」
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