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カネナルヘビ
『続報です!カネナルヘビについて、さらなる情報が飛び込んで参りました!』
テレビの中、リポーターの女性が興奮したように話している。みんみんみんみん、と五月蝿いくらいの蝉時雨の中、額に浮いた汗を拭いながら。
『カネナルヘビの体長はおおよそニ十センチほど、文字通り金色に輝いているとのことで……。現在は隣町のご家族のところで暮らしてらっしゃるという、ホシハタ村の職員、会沢さんにお越しいただきました。会沢さん、よろしくお願いいたします』
『ええ、ええ。どうも。よろしくお願いいたします』
若い女性リポーターにインタビューされているのは、真っ白になった髪をお団子頭にしている高齢女性だった。結構な年ではあるようだが、腰も曲がっていないしスーツもぴっしり着込んでいる。何より、受け答えがはっきりしているので、耳も遠くないようだ。
会沢、と呼ばれた彼女ははきはきとした喋り方で、カネナルヘビ、について質問に答えていく。
『カネナルヘビを一番最初に発見したのは、うちの職員でございましてね。それはそれは美しく輝く、綺麗な蛇だったんですのよ。カネナルヘビというのはまあ仮名のようなものでございますが、文字通り金の成る木といいますか、金色に光って見えましてね。目は綺麗な赤色で、まるでルビーのようだったということで。まさか過疎が進んだうちの村から、そんな新種が発見されたなんて……ねえ?みんな大騒ぎですし、早く見つけたいと躍起になっているところでございますのよ。村おこしをしたいと思った矢先、いやあ、幸運なことでした』
『サイズとしては、そんなに大きくないみたいですね?』
『はい。コンクリートの地面を、足元をすすすーっと這っていったのでわかりやすかったのです。幸い、牙も小さいですし、噛まれても毒なんかはないですからね。ぜひ、皆さん怖がらずに探しに来てくださいまし。見つけて下さった方には、村から賞金を出すことにもなってますのでね……』
ふへえ、と私は息を吐く。土曜日の午後。帰宅部の女子高校生はいたって暇というものである。お昼ごはんを食べたあと、そのままなんとなくテレビをつけっぱなしにしていたらやっていたニュースだった。
カネナルヘビ。最近は、この話でテレビもネットも持ち切りである。特に、学校で話している人は少なくない。見つかったのが隣県の村だというのも大きいのだろう。
「新種の蛇探しとか、ちょっと面白そうだねえ。うちらも明日とか行ってみるう?」
冗談交じりに、私はソファーに座って本を読んでいる弟に声をかけたのだった。すると。
「やめた方がいい」
彼は文庫本をパタンと閉じて、とんでもないことを言ったのである。
「死ぬかもしれないよ」
「え」
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