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カマとの通話を終えてから、30分近く経っただろうか。
ヒョロヒョロとした長身の到着を待って、下で落ち合う。
いつもなら、ここか上のどちらかに、ほぼほぼツッチーの姿がある。
警察官に、修たちの関係性を説明するクルの背中を眺めながら。
(実は上でツッチーが、カマやみっつんと駄弁ってるんじゃ……。スゲーよく仕組まれたドッキリとかさ)
修はどこか実感が湧かなかった。
「行くよ。たなやん」
癖っ毛の茶髪に促され、ゆっくりと、重い一歩を前へ踏み出す。
「「「……………………」」」
二人の警察官に挟まれて、何か言われるわけでもなく、エレベーターに乗る。
向き直り、エレベーターボタンを起点に、右から順にクル、修、藤と並んだ。
あっという間に五階へ着いて、廊下の床から顔を上げると、疲労が滲むカマとみっつんが待っていた。
「お姉さんは?」
クルの質問が、コンクリートの廊下に木霊する。
「あっちで警察の人と話してる。さっきまで俺も一緒に聞いてたんだけど。お前らがくるってなって、こっちに呼ばれた」
『呼ばれた』の部分で、修たちを連れてきた二人の内。エレベーターから最初に降りた方の警官とカマの目が、一瞬合ったことに修は気が付いた。
恰幅の良いおじさんだ。
腕組みし、品定めするように修たち五人を目線でなぞる。
(疑われてる。他でもない。友人である俺たちが)
何を訊かれたわけでもないのにおじさんの目が、そう言っていて警戒する。ヒュンと心臓の辺りが萎縮して、修は居心地の悪さから左を見遣った。
「…………」
神妙そうな面持ちで瞼を伏せる藤。
(コイツこんな表情出来たんだな)
「首吊ってたって本当ですか?」
修の現実逃避とは打って変わって、クルの淡々とした声が、どうしたって今回の事態が現実なんだと訴えてくる。
「嗚呼、そうだ。一枚のルーズリーフを部屋に残してね」
「ルーズリーフ?」
「何か書かれてたんですか?」
おじさんの警官に、藤と修の疑問が飛ぶ。
「君たち三人はこのメモに。何か心当たりはあったりするか?」
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