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カーキ色のコートのポケットから、真空袋入りのB5の紙が差し出された。取り囲み、前のめりになって覗き込む。
「イヤ。知りません」
「これが……?」
「…………」
すぐに否定した藤に対し、修とクルの眉間に皺が寄った。
「君たち二人は知ってそうだね?」
犯人を炙り出すのに成功したみたいな、疑い切った眼差しが向けられる。
「知ってるってほどじゃありません」
生まれた誤解を解くために、修は口を大きめに開けて、おじさんの目を見た。
もう一人。若い方の警官の左隣に立つクルが「それ多分、あだ名です」とこともなげに呟いたから、若い警官が驚き半分で首を傾げた。
「あだ名??これが??どっからどう見たって、メシのリストにしか見えないけど?」
その警官の言う通り。メモには上から、
【生姜焼き】
【ソーセージ】
【天ぷら】
【スルメイカ】
【パスタ】
【味噌汁】
と、料理や食材の名前が、無機質に書かれている。
受ける印象は、食いたいものをただ書いただけ。そんなもんだ。特別何か意味があるようには、修にだって特に思えない。
(ここ数日で。この中のワードを、偶然二つも耳にしてなければなぁ)
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