6人が本棚に入れています
本棚に追加
おじさんの方の警官が、クルの正面へと身体を向けた。
「どうやら一番、君が詳しそうだ。このメモはね。彼の部屋のテーブル中央に置いてあったんだ。他はいわゆる、一般的な自殺現場となんら変わりはなかったのに。これだけがあの部屋で異質だった」
「それでおじさんは。俺たちの中に、ツッチーを自殺に追い込んだやつがいるって言いたいんですか?」
アンニュイな雰囲気はそのままに、右から聞こえた言葉に目を見張る。
(…………はっ?今言ったよな?俺たちの中に、ツッチーを……。いや、そんなはず)
「あり得ない話じゃないだろう?亡くなった彼はまだまだ若い。仲間内の揉めごとで、精神を病んでたって」
「ツッチーはそんなやつじゃっ!!」
誰よりも、ツッチーとの付き合いが長いカマの腕が振り下ろされる。
「果たしてそう言い切れるかな?現にほら、こっちの二人はこのメモについて知ってても。君ら三人は知らなかったろ?一見みんな仲良くしてても、実際一人ひとりを見てみると、実はそうでもないってのは、集団になればよくあることだ」
「でも、あいつは……」
カマの拳が震えている。その気持ちは痛いほど解るのに、知ってる側へ分類されたせいで、修はかける言葉が出てこない。
(俺が何か言えば、きっと逆ギレされるだろうしな。……クルさんと違って、断片的に耳にしたってだけなのに)
明らかに、停滞し出した雰囲気に、癖っ毛の下から不満そうな声が漏れ聞こえた。
「埒が明かなそうなんで、上から順に、誰のあだ名か言ってってもいいですか?」
「もちろん。頼もう」
それからクルが料理名に合わせつつ、修たちを指差し説明する謎の時間がしばらく続いた。
「で。最後の味噌汁が、そこの黒髪の彼です」
パスタがクル自身だと喋っているのを聞きながら、(やっぱり俺が味噌汁か……)と、書いた本人の言葉が蘇る。
『たなやんは味噌汁だから、今のままで良いんじゃね?』
あの時感じたゴツゴツとした指輪の感触。そんなものがふと過って、後頭部へ自然と修の腕が伸びていた。
「頭痛いの?」
ほんの少し眠そうな藤に問われ、「まぁ、まだ八時とかだし。寝不足かも」そう口にして修は誤魔化した。
最初のコメントを投稿しよう!