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「すみません。もう大丈夫なんで。お騒がせしてホントすみません」
修が各方角に、ペコペコと頭を下げる。
「ありがと。みっつん、たなやん」
「……………………」
お礼を言ったクルと鼻息がまだ荒いままのカマを見遣る。修がなんと言うべきか迷っているのを察したのか。双方へ向けて、みっつんが珍しく真面目な顔で口にした。
「お前らさ。これからツッチーのこと見送ってやるんだろ?なら、喧嘩なんてしてないで、ちゃんとしようぜ。な?」
「こんなことなら、エロ本の趣味。聞いときゃ良かった」
「藤。お前の頭の中、どうなってんの?」
壁際に立つ人間に、条件反射で思わずツッコむ。
みっつんの人差し指と親指が、綺麗にパチンと音を鳴らし藤へと向いた。
「ツッチー。純粋系に弱かったけどな。あと儚い系」
「嗚呼〜。なら、あ」
「あああ〜〜っ!!!そっ、そう言えば!!」
勢い任せに言葉を被せる。
(藤のやつ!!いま何言おうとした?!頼むから勘弁してくれ)
マイペースなのは構わないが、周囲を気にしないにもほどがある。
大学生にもなって、TPOというものが未だ身に付いていない脳内ピンクバカを、修はわざと白い目で見た。
「たなやん今日、川島並みにゴール防ぐじゃん」
少し楽しそうに呟かれ、小中とサッカー部だったクルを睨む。
「元はと言えばクルさんが、俺とカマの話し合いを邪魔するから」
襟ぐりを直す垂れ目を見つめる。
振り返ると、すぐ向かいにいたはずの、カマの姿がそこにはなかった。
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