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反対側のホームにすぐきた電車内へ乗り込むイケメン。実際には後ろ姿しか見えていなかったけれど。乗り込んだ直後こちらへと向き直り、スマホから修へと顔を上げて軽く手を振ったのを見て、修は改めて思う。
(嗚呼、神様って不平等なんだな) と。
別にツッチーはイケメンだからといって、斜に構えている訳でも、顔面のことについて積極的に何か言ってくるようなやつでもない。
どことなく軽やかで優しく、レポートを書くのが少し苦手な人気者の美男子だ。
友達だってかなり多い。
ツッチーが乗ってから、数分後。修もやってきた電車に乗車した。車内で通知を確認する。バイト先の店長からの連絡だ。
『今日のシフト入れないかな?宮坂さんが風邪引いちゃって急に休むって。田中くん代わり出てもらえない??無理かな?』
(宮坂さん、日曜結構咳してたもんな)
一個上の女性の先輩が、マスクの上から手を添えていた姿を思い出す。
『良いですよ』と修は脳死状態で返信して。
(……………………)
そもそも母数が少ないメンツを頭の中で数え、再びスマホを手に取った。
(絶対しんどい。用事を思い出した体で断ろう)
『やっぱり無理です』のメッセージを返そうとしたら、『よろしくお願いします』と柴犬が土下座しているスタンプが送られてきて、そのままスマホをパーカーのポケットへと入れた。
(明日は一限からだから、火曜はシフト入れてないのになぁ。先週も出させられたし、俺、便利屋扱いされてんのかな?)
本来なら三十分は乗っているはずの地下鉄から、たった三駅で下車して雑居ビルの一階へと向かう。
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