Episode1 異変

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 チェーン展開しているカフェの夕方から夜にかけて。駅前の混雑店の癖に、店員は、社員の店長とバイトの修に真野さんの三人だけ。明らかな人手不足だ。二人は基本キッチンなので、修はカウンターを一人で回す。 「ありがとうございました」  最後のお客さんを、修はテーブルを拭きながら見送った。  ささっと着替えて、店を出た真野さんの後に続こうとしていたら、店長から「これ、今日のお礼。知り合いにもらったお守りなんだけど。自分にはちょっと可愛過ぎるから」と、小さなブタの人形を二個手渡された。 「どうして二つなんですか?」 「大切な人と持ってると、幸運が訪れるらしい」 「えっ?俺より真野さんの方が……」  修は自分で言って悲しくなり、途中で止めた。  照明を落としたカフェで、白と赤のブタが一体ずつ手のひらに。 「田中くん。おじさんは、君みたいな良い子に良縁があってほしいんだよ」  店長が発した「良い子」の意味を自分なりに噛み砕く。 (きっと、真野さんが口にしてた「良いように」も含まれてるよなぁ……)  修はなんだかそんな気がした。 「ありがとうございます」  右手に握った紅白のブタを、スマホが入っていない方のパンツのポケットへと仕舞う。 「 お疲れ様でした」  本当は、訊いてみたい気持ちもあった。 『その良い子ってのには、【店長にとって】ってニュアンスも含まれますか?』って。  さすがに意地汚い大学生だと思われそうで、次からのシフトのことを考え口にしなかったけれど。
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