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元々ぼうっとしてる性格で感情の起伏を外に出さない俺だから、アイツが死んだと聞いてからの俺も何一つ変わらないように見えているらしかった。
ただ一人、彼女だけは俺の感情の変化を見破った。
「何かあった?」
一連の知らせを聞いたその日、アイツのスマホから俺とのやりとりが見つかったため警察に事情聴取された。そんな怒涛の半日を過ごした後、同棲しているアパートに帰宅し彼女の菜々美が俺にかけた第一声はそれだった。いつもは「おかえり」と笑顔で迎えてくれるがその日は違った。
菜々美にはアイツのことを何一つ言っていなかった。理由は複雑だが、言う必要もないと思っていたからだ。だから何から話せばいいのかもわからず、俺はぐちゃぐちゃの気持ちのまま黙って六畳の部屋のベッド脇に座り込んだ。それを見て、菜々美はただ事ではないと察したのだろう。黙って俺の隣に座って、何も言わず自分の腕を俺のそれに組んだ。
「大学の同級生が...死んだ。」
ようやく俺が口を開くと、菜々美は間をおいて「大変だったね」と答えた。俺は次の台詞を喉の手前で止めた。今までアイツのことを言わなかったのは菜々美に心配をかけたくなかったというのが一つだったから。
でもその時の俺の頭はめちゃくちゃで先のことを考える余裕もなく、溢れるように俺の口から言葉が出た。
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