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菜々美は最後まで俺の話を静かに聞いた。アイツの相手をするのが面倒だと思ってしまった俺の酷い心の内を菜々美は否定するでも驚愕するでもなくただ黙って聞いていた。
「その人が死んでしまったのは悲しいことだね。でもその人はきっと直人のこと好きになっちゃってたんだよ。最初に話を聞いてくれたから。直人は優しい人だってわかってたと思う。」
全部を聴き終えた菜々美が最初に言ったことは俺が思っているのと違った。だが俺はわかっている。菜々美は俺を慰めたいからこじつけでも優しいことを言ってくれているのだと。そんな菜々美の優しさを無下にしたくない俺だが、それを言葉に出来る余裕がその時の俺にはなかった。何であれ、俺があいつを殺したことに変わりはないんだから。俺の腕を組んで離さない菜々美のその手を一度少しだけ握って、
「バイト行ってくる。」
と言って引き離した。菜々美は何も言わず、部屋を出ていく俺をただじっと見ていた。
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