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「ほう、中間試験も学年トップか、なかなかやるじゃないか。この分なら、お父さんと同じ東大も夢じゃないな」
お父さんがすごく喜んでいる。「トウダイ」がなんだか分からないけれど、きっと美味しいオヤツがいっぱいある、すごいところなんだろう。
「まあね」
圭君は、ゲームから目を離さずに答えた。
「あとはその生意気な態度が治ればねえ」
お母さんが苦笑交じりに言った。
「まあ、この年頃なんてこんなもんだろ。それより、うちの大事な長男だし、身体には気を付けろよ。受験は体力勝負だしな」
ふうん、「大事な長男」か。舞ちゃんは?
「……あたしも大学行きたいな」
舞ちゃんがボクをブラッシングしながら言った。舞ちゃんが自分のしたいことを言ったよ! お父さん、お母さん、聴いてあげて!
「勿論。でも、それには算数と理科をもうちょっと頑張ってもらわないとなあ」
今度はお父さんが苦笑している。
「舞は短大でもいいじゃない。私はね、舞には、仕事ばっかりするような女性になってほしくないのよ。結婚して、子どもを産んで、いいお母さんになってほしいの」
お母さんがちょっと困ったような顔をしてそう言うと、お父さんが、
「お母さんがそんな心配しなくても、いいじゃないか。舞、行きたいところに行っていいぞ。圭もな。二人とも俺の自慢の子どもだよ」
そう言って、いかにも頼もしそうな顔で笑った。お父さんも、やるときはやるんだね。お金を稼いでいるのだって、考えてみれば、圭君や舞ちゃんやボクのためだ。舞ちゃんはきっとどこにだって行ける。なんにも我慢しないで自由になれるんだ!
ボクがウラニシさんの家から逃げた時のように、行きたいところにいかないとね。
でも、その時はボクも連れて行ってね。
「お母さん、何かといえば『舞にはいいお母さんになってほしい』なんだよね……」
はああ、と舞ちゃんはビーズを布に縫い付けながら、深いため息をついた。なんだか大変そうだね。
「あたしは、お祖母ちゃんみたいに、仕事をバリバリする人になりたいのに」
そうなんだ。舞ちゃんなら、きっとなれるよ!
「でも、学費出すのはお父さんだから、お母さんに反対されても、大丈夫だよね!」
舞ちゃんそう言って、天井を見上げた。
「算数と理科は頑張らなきゃいけないけど……。よし、ココちゃん、できたよ!」
新しい首輪だね。ビーズがたくさん光って綺麗だな。舞ちゃんはお母さんに似て器用だ。
「この間の誕生日に、猫用の服の型紙がたくさん載ってる本を買ってもらったんだ。これからは首輪だけじゃなくて、お洋服もいっぱい作ってあげるよ」
服なんて別に要らないけど、舞ちゃんがそれで喜ぶなら着てあげるよ。
お母さんは舞ちゃんに服を作って喜んでるし、舞ちゃんはボクに服を作るといって嬉しそう。まあ、これくらいは、ボクも舞ちゃんも、愛玩動物だから仕方ないよね。
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