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 月曜日は舞ちゃんが一人でお習字の稽古に行く日。火曜日は舞ちゃんと圭君が一緒に塾に行く日。水曜日は圭君が一人で塾に行く日。木曜日は何もない日。金曜日は圭君が算盤塾に行く日。  今日は月曜日。舞ちゃんはお習字に行った。お母さんは買い物。お父さんは、まだ仕事から帰ってこない。家には圭君とボクだけ。 こんな日は危険だ。圭君は他に誰もいない時、よくボクを蹴とばす。いても蹴とばすのだが、いない時はもっと蹴とばす。なるべく離れていなければならない。  圭君はゲームに夢中だ。この分なら安全だろう。ボクは窓のそばで、じっとしていた。 「ちくしょう、全然つまんねえよこんなの!」  という声がしたかと思うと、お腹に強い衝撃があり、ボクの身体が宙に浮いた。うたた寝をしていて、圭君が近づいたのに気づかなかったのだ。 「圭! ココに八つ当たりをしないの!」 お母さんの声がした。丁度、お母さんと舞ちゃんが帰ってきたのだ。 「ココちゃん、大丈夫? 本当に圭は乱暴ねえ」  お母さんがボクを心配そうに抱き上げてから、圭君を睨みつけた。そして、圭君が持っているゲーム機を見て、変な顔をした。 「そのゲーム機、初めて見るけど、そんなの持ってた?」 「……貯めてたお年玉で買ったんだよ」 「お年玉は毎年すぐに使っちゃうじゃない」 「とっといた分もあるんだよ! うるさいな!」  圭君が今までにないくらい声を荒げた。お母さんはびっくりした顔をして、少し体を後ろに引いたけど、 「……あんまりゲームをやり過ぎては駄目よ。舞、筆を洗ったら、夕食の支度を手伝ってね」  と、冷静さを装いながら言った。  舞ちゃんは、ボクを撫でてから筆を洗い、休む間もなく台所へ行った。その間、圭君はずっとテレビを視ている。その顔は明らかに不機嫌だ。近づいてはいけない。ボクはお母さんのお手伝いをしている舞ちゃんの足元にずっと纏わりついていた。  お父さんが帰ってきて夕食が始まっても、まだ圭君は不貞腐れている。ボクは舞ちゃんの膝の上に乗った。 「ココは本当に舞のことが好きだな。圭なんか、いつもいじめているから、嫌われているんだろう」   お父さんは何故か楽しそうな顔をしている。そんなに面白い話題かな? 「猫に好かれたって嬉しくもねえよ。おかわり!」  圭君は不機嫌なわりには、旺盛な食欲である。 「生意気な上によく食うなあ。お母さんが、甘やかしているんじゃないか?」 「私は厳しく育ててますよ。よく食べるのは成長期だからでしょ。お父さんこそ、圭に甘いんじゃない? 圭、ありがとうぐらい、言いなさい」  黙って御飯茶碗を受け取った圭君に、お母さんが注意したが、圭君は平気な顔でご飯を口に入れる。 「圭、成績さえよければいいと思っているなら、大間違いだぞ。今どきはな、男も家事ができたほうがモテるぞ」  自分のことを棚に上げて、お父さんが説教を始めた。 「尽くすタイプの女の子を探すから大丈夫だよ」 「まったく、ああ言えばこう言うなあ」 「父さんと違って文句を言わない奥さん探すから」 「圭! なんてことを言うの!」  お母さんが、心外だといった顔で怒った。 「そうだぞ、圭。お母さんは、お父さんが選んだ人なんだからな」 「俺は尽くされるタイプなの」  圭君は怒られてもけろりとしている。そんな圭君に、お母さん、お父さん両人は呆れて顔を見合わせた。
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