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それから一ヶ月。ボクは段々に、舞ちゃんの家に慣れていった。ウラニシさんの家のことも、思い出すことは減ってきた。
ボクの世話は、主に舞ちゃんの役目だ。舞ちゃんは十一歳だというけれど、猫のボクには、人間の年齢のことはよく分からない。舞ちゃんのお母さん││これからはこの人を「お母さん」と呼ぶ││が言うには、ボクと、舞ちゃんの年齢はほぼ一緒らしい。人間は成長が遅いんだなと驚いたものだ。舞ちゃんはボクを「ココちゃん」と呼び、ご飯をくれて、いろんなおもちゃで遊んでくれて、ブラッシングも沢山してくれる。爪を切られるのはまだ怖いけど、舞ちゃんになら体を預けても構わない。
散歩も舞ちゃんと一緒だ。普通の猫は、人間と散歩なんてしないらしいけど、ボクは舞ちゃんと外の世界を見るのが大好きだ。ウラニシさんの家から出たときに、外の世界の明るさと、息のしやすさに感動したからかもしれない。ボクはもっともっと外の世界が知りたかった。何度も外に出たがるボクに、舞ちゃんは悩んだ末に、「あたしのそばを離れちゃダメだよ」と言って、一緒に散歩に行くようになった。だから、言いつけを守って舞ちゃんにくっついて離れない。我ながら忠実だと思う。
「舞ちゃん、こんにちは。今日も猫ちゃんとお散歩なのね」
「こんにちは! 今日も暑いですね」
舞ちゃんは笑顔で挨拶を返す。舞ちゃんと歩いていると、近所の人が声をかけてくる。舞ちゃんは人気者だ。
今日もボクたちは近所の公園に散歩に出かけた。広い公園で、あちこちにベンチが置いてあり、たくさんの花や樹も植えられているし、小さいけど池もある。舞ちゃんお気に入りの散歩コースだ。ボクと舞ちゃんはよくここで遊ぶんだ。
ご機嫌で舞ちゃんのそばを歩いていた時だった。
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