B班(仮)

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超大手お菓子メーカーGOTTAN その宣伝部で、私は働いている。 と言っても、正社員ではない。 派遣社員だ。 小さな企業の事務員として働いたあと、 専業主婦を経て派遣社員になったのだが、 まさかこんな超大手の本社ビルで働く日が来るなんて、 思ってもみなかった。 だから、初日はものすごく緊張して、 気合でスーツをキメていったのだが、 それは空回りに終わった。 社員さんたちの服装は、 なにかのパーティーでもあるのか、 今からTVドラマにでも出るのか、 と思うほど素敵だった。 同じフロアには、独特なファッションの クリエイターの人たちもたくさん混じっていたので、 リクルート風スーツの私は、浮きまくりだった。 それならばと、次の日はワンピースで出勤してみたのだが やはり、私には自分がくすんで見えた。 次の日は、パンツスーツ その次の日は、セットアップと 数日間、頑張って、頑張って、 周りに合わせようと頑張った結果、 ある事が分かった。 正社員の彼らに、私は見えていないのだ。 彼らは、私の名前も呼ばない。 「派遣さん」とか 「クレートさん」とか、派遣の社名で呼んでいる。 それに気づいてからは、Tシャツにジーンズで出勤することにしたが、 案の定 何も変わりはなかった。 仕事は、いわゆる雑用。 毎日 届けられる雑誌や新聞の入れ替え フロアに散らばる販促グッズの片付け 郵便物や荷物の仕分け がメイン。 時給は、そこそこだったが、 社員さんたちは、打ち合わせや勉強会などで 一日中ほとんど席にいないから、とても気楽。 冷たく、透明人間扱いされたとしても まあ気に入ってる仕事だった。 気に入ってると言えば、実はこの手紙もその一つ。 不定期に、宣伝部宛に届く手紙だ。
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