Ｂ班（仮）

手紙の送り主は、
都内在住　32歳のアイルさん。
数年前から送ってきているらしい。
始まりは、就職を希望するためのものだったのか、
GOTTANを称賛する文章に、プロフィールや履歴書などが同封されていたと聞いた。
その後、次々と送られて来た手紙の中には、
近況報告や、たくさんのセルフィーの他に、
なぜか七五三の時の家族写真のコピーもあったとか。
個人情報の懸念があるものは、すぐにシュレッダー処理されたらしいが、
手紙の一部は部内で保管されていた。
最近のアイルさんは、CMに興味を持っているようで、
自作だというCM曲のコード表や、
歌詞、ポエム、俳句に短歌、
筆で書かれたミツヲ風の作品や
アメコミ風のデザイン画を送ってきたり、
CMの企画書や使用するタレントの提案をしてくるなどしていた。
いずれにしても、
GOTTANからは一度も返信していないのだが、
アイルさんの手紙は届き続け、
社員さんたちは、受け取りだけでも面倒になったのだろう。
3年ほど前から、この手紙を開けるのは、
派遣の仕事になっていた。
私が前任の派遣・リリさんから仕事を引き継いだ時、
この手紙たちも渡され、その量と内容にとても驚いた。
社員さんたちは辟易していたようだが、
私にとっては、すごく面白いものだった。
午前中のルーティンワークがひと段落したら、
コーヒーを飲みながら、アイルさんの手紙を読むのが楽しみになっていた。
過去のものを読み終えてからは、次の手紙を待ち望むほど。
そして、今日、久しぶりの手紙にわくわくして開けてみたところが、
あれだったのだ。
『【貴社の秘密を見つけてしまいました】
って何？』