夕陽恋

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 次の日も砂浜で彼女を待つ。昼の日差しから夕日になって、夜が訪れる。彼女は姿を現さない。  この日だけじゃなかった。僕にさよならの一言も残さないで彼女は消えてしまった。本当に夏の亡霊だったのかもしれない。そう思ったときにはもう海からの風が涼やかになっていた。  会えないとわかっていても、僕は砂浜で彼女を待つ。それでも現れない日々。目標の中学校に合格して、そこでも彼女を探す。まだ見付からない。  病院で確かめることはできなかった。怖かったから。あれから彼女がどうなったのかは知らない。親たちも黙っている。  あの夏の終わりから砂浜の風景は一周していた。雪が海へ降る日もあった。それだってもう昔のことになってる。  再び夏が訪れた海で僕はまだ彼女を探してる。いつまでも消えない記憶だけを残して。  また彼女は現れないんだろう。もうそんなこともにも慣れてしまっている。それでももう一度彼女に会いたい。  僕の願いは到底叶わないことになってるのかもしれない。それは最悪の状況を示してる。そんなことを考えたくもないからただ待っていた。 「暑いのに」  遠い昔みたいに去年のことを考えながら呟く。返事なんてないのだと思ってた。でも違った。あの明るい声が聞こえる。間違いなんかじゃない。確かに返された。幻聴でもない。心が躍る気がしながら振り返ったなら。 おわり
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