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最低な二学期の始まりと君に向けた約束
チッチッチッチッチッチ
見下ろした左の手首を一瞥すると、針は朝8時51分を指していた。
視線を少し上げて、目の前にあるノブに手を伸ばす。
金属のドアを内側から外側へ開けると、びゅうっと生暖かい風が一瞬、私の全身を滑った。
まだ暑い。コンクリートからの照り返しで目に入る日差しを避けるように、私は手で傘を作り目元に影を作った。
空は晴天。ふわふわとした綿雲が浮いている。
涼しくはない。生暖かい緩やかな風が、イライラ指数を上げていく。
早くも校舎に引き返したくなったが、私は歩みを進めた。
ポツンと欄干前に佇む彼の後ろ姿だ。
びゅうっと強めの風が吹いた。
ふわっと上がるスカートの裾を右手で押さえた。
ゆっくり近づく。
近くで見れば黒い学生ズボンから、だらしなくハミ出たシャツに所々黒や茶の染みが出来ている。
彼は首を傾けて足元を見ていた。いや、正しくは、うす汚れた自身の上履きを、じっと見つめていた。
斜め後ろから私は話しかけようとした。だが私が口を開くよりも、彼の方が早かった。
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