第一章 - 花霞 -

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普段お店で着物を着ている私が言うのはなんだけど、なんでこの人は袴なんて古風な物を着ているんだろう? あとなんで今、私も着流しを着てるの? 確か普段着を着てなかったっけ? ‥ううん、いろいろ気になることはあるけど一旦端に寄せて、もっと大事なことを確認しないと。 「あの、一つ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」 「うん、もちろん」 こくりと頷く青年。 「ここ、どこです?」 まったくこの部屋に見覚えがないんですけど‥。 「ここは新選組の屯所だよ。君が昨日倒れてた‥と言うより木に寄りかかって寝てたから僕がここに連れて来たんだ」 「木?」 「そう、桜の木にね。もしかして覚えてない?」 「覚えてないと言うか、知らないと言うか‥いや、え、ちょっと待ってください」 首を傾げる青年に曖昧に返して、今まであったことを必死に頭の隅から引っ張り出す。 桜の木に寄りかかって気を失っていた? 確か私はトラックに跳ねられたはず。 あの時は言葉にならないくらいに痛かった。 なのに今、身体は全く痛くない。 新選組の屯所?新選組って確か幕末の京の治安を守っていた武装警察だったはず。 ‥え、幕末の京?武装警察? 「大丈夫?」 「え、ああ‥はい」 待って待って本当に待って。大丈夫じゃない。 全くもって大丈夫じゃない。 私の身に何が起こったの?
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