第一章 - 花霞 -

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「そう言えばまだ名前を言ってなかったね。僕は沖田総司。良かったら君の名前教えてくれないかな?」 「‥っ!っはい。さ、桜庭、あ、杏 、といっ言いまっ‥す」 しゃくりあげながらも何とか答える。 けど、この人の名前を聞いてもっと泣きたくなってしまった。 沖田総司。 かの有名な新選組一番組組長。 組内で一、二位を争う程の実力の持ち主。 そして確か、慶応四年に労咳‥今で言う肺結核で亡くなってしまう人。 目の前にいるこの人が本物なら、本当に幕末の世に来てしまったんだ‥って。 でもまだ諦めるのは早い。 まだここが時代劇のセットだという可能性も‥ 「あるわけない‥」 思いっきり事故に遭ったし‥。 思い出したくないくらいに苦しかったし、痛かった‥あれは絶対に現実。 ああ、本当にどうしよう!! 「ねえ‥大丈夫?」 沖田さんが俯く私の顔を心配そうに覗き込む。 ‥これ以上この人に心配をかけるわけにはいかないよね。 「もう大丈夫です。だいぶ落ち着きました」 顔をあげて沖田さんに笑いかける。 たぶんぎこちないだろうけど。 だって全然落ち着いてなんかいないし、内心まだ整理しきれてないから、それくらいは許してほしい。
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