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「そう言えばまだ名前を言ってなかったね。僕は沖田総司。良かったら君の名前教えてくれないかな?」
「‥っ!っはい。さ、桜庭、あ、杏 、といっ言いまっ‥す」
しゃくりあげながらも何とか答える。
けど、この人の名前を聞いてもっと泣きたくなってしまった。
沖田総司。
かの有名な新選組一番組組長。
組内で一、二位を争う程の実力の持ち主。
そして確か、慶応四年に労咳‥今で言う肺結核で亡くなってしまう人。
目の前にいるこの人が本物なら、本当に幕末の世に来てしまったんだ‥って。
でもまだ諦めるのは早い。 まだここが時代劇のセットだという可能性も‥
「あるわけない‥」
思いっきり事故に遭ったし‥。
思い出したくないくらいに苦しかったし、痛かった‥あれは絶対に現実。
ああ、本当にどうしよう!!
「ねえ‥大丈夫?」
沖田さんが俯く私の顔を心配そうに覗き込む。
‥これ以上この人に心配をかけるわけにはいかないよね。
「もう大丈夫です。だいぶ落ち着きました」
顔をあげて沖田さんに笑いかける。
たぶんぎこちないだろうけど。
だって全然落ち着いてなんかいないし、内心まだ整理しきれてないから、それくらいは許してほしい。
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