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沖田さんに少しの間、抱えられているとある部屋の前で立ち止まった。
「近藤さん、総司です」
「ああ、入っておいで。と言いたいところだが両手が塞がってるようだな。もしかしてあの女子を抱えているのか?」
沖田さんが障子越しに部屋の中に向かって声をかければ、低めの声が返って来る。
「はい、そうなんです。だから土方さん、そこにいますよね?開けてもらえます?」
「‥ああ」
今度はさっきの人とはまた違った男の声が中から返ってきた。
少なくとも部屋の中に二人はいるらしい。
障子が横に動き、黒髪の男が姿を現した。
「‥総司、なんでお前はこの女を抱えてんだ」
「この娘、立とうとした時に腰が抜けたんですよ」
くすくす笑いながら答える沖田さんに、怪訝そうに眉を顰める男。
「お前‥‥まさか」
「してませんから。変な誤解しないでください。土方さんじゃあるまいし」
「その一言はいらねえだろうが」
はぁ‥と溜め息を吐き、部屋に入ると私を畳の上にそっと下ろしてくれた。
「痛くなかった?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございました」
「うん、どういたしまして」
にこりとまた柔らかく微笑む。
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