第一章 - 花霞 -

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沖田さんに少しの間、抱えられているとある部屋の前で立ち止まった。 「近藤さん、総司です」 「ああ、入っておいで。と言いたいところだが両手が塞がってるようだな。もしかしてあの女子を抱えているのか?」 沖田さんが障子越しに部屋の中に向かって声をかければ、低めの声が返って来る。 「はい、そうなんです。だから土方さん、そこにいますよね?開けてもらえます?」 「‥ああ」 今度はさっきの人とはまた違った男の声が中から返ってきた。 少なくとも部屋の中に二人はいるらしい。 障子が横に動き、黒髪の男が姿を現した。 「‥総司、なんでお前はこの女を抱えてんだ」 「この娘、立とうとした時に腰が抜けたんですよ」 くすくす笑いながら答える沖田さんに、怪訝そうに眉を顰める男。 「お前‥‥まさか」 「してませんから。変な誤解しないでください。土方さんじゃあるまいし」 「その一言はいらねえだろうが」 はぁ‥と溜め息を吐き、部屋に入ると私を畳の上にそっと下ろしてくれた。 「痛くなかった?」 「はい、大丈夫です。ありがとうございました」 「うん、どういたしまして」 にこりとまた柔らかく微笑む。
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