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「おいコラ杏!店番中にボーッとすんな!!」
「いたっ!」
優しい日の光が当たる午後三時。
うとうとと微睡んでいると頭を思いっきり叩かれて、店のカウンターにおでこを強打した。
店内にいたお客さんがこちらを見て、ぎょっとした顔をする。
その内の数人はまたか‥と呆れたような表情に変わった。
「ちょっと父さん!おでこ打ったんだけど!!手加減してよ!」
「はん!娘に手加減する道理はねえな」
「なにそれ酷い!」
「あ?仕事中に寝こけてた奴が何言ってんだ。文句あんならもう一発かますぞ」
「ないです!」
ぶんぶんと首を振る私の背後で拳を握り込んだまま睨み付けてくるこの人は、私の父であり、この老舗甘味処の現主人だ。
普段は優しい‥はず。いや、この歳の娘に拳骨かますなんてただの鬼だ。
でもこんな鬼でも私のたった一人の家族。
母は私が小さい頃に父さんと離婚し、私と歳が離れている兄を連れて出て行ったから今はいない。
「痛いなぁ‥もう」
カウンターで打ったおでこが痛い。
腫れてたりしないよね?
「おいおい。こーんな可愛いむすめちゃんを傷つけちゃダメだろ?」
そこに現れたのはお店の中でのんびりお茶をしていた常連さん兼、父さんの友人。
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