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春先らしくないまだまだ冷たい風が頬を撫でる。
「あー‥さむ」
冷たい風を浴びて身体はすっかり冷えきっていた。夜道に目を光らせながらも寒さに震えている隊士もいる。
‥これ以上外にいたらさすがに風邪をひきそうだし、もういいかな。
「よし、今日はここまでにして帰ろ‥う?」
振り返り際、ふわっと甘い香りが鼻先を掠めた。
気のせい‥?
「沖田先生、どうかしましたか?」
「ううん。ちょっと先に帰っててくれるかな?僕もすぐに帰るから」
「分かりました。お気を付けて」
いや、気のせいじゃない。
確かにどこからか甘い匂いがする。
「いい匂い」
気の迷いだったのかもしれない。
僕はその匂いにつられて歩きだした。
これが彼女との出逢いになるとは
露にも思わず。
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