第一章 - 花霞 -

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春先らしくないまだまだ冷たい風が頬を撫でる。 「あー‥さむ」 冷たい風を浴びて身体はすっかり冷えきっていた。夜道に目を光らせながらも寒さに震えている隊士もいる。 ‥これ以上外にいたらさすがに風邪をひきそうだし、もういいかな。 「よし、今日はここまでにして帰ろ‥う?」 振り返り際、ふわっと甘い香りが鼻先を掠めた。 気のせい‥? 「沖田先生、どうかしましたか?」 「ううん。ちょっと先に帰っててくれるかな?僕もすぐに帰るから」 「分かりました。お気を付けて」 いや、気のせいじゃない。 確かにどこからか甘い匂いがする。 「いい匂い」 気の迷いだったのかもしれない。 僕はその匂いにつられて歩きだした。 これが彼女との出逢いになるとは 露にも思わず。
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