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「‥桜?」
甘い匂いを追いかけて歩き回っていると、遠くまで来てしまったのか緩い丘の上に来ていた。
目の前には見事に薄桃色の花を咲かせた大きな枝垂れ桜の木。
月の光に当てられて桜の木自身が光を発しているように見える。
「へぇ‥一月なのにもう咲いてるんだ」
なんでこんなに綺麗で目立ちそうなのに今まで気付かなかったんだろう?
暖かい日にでもここで近藤さん達とお花見がしたいな。
「あ、この匂い‥」
また甘い匂いが鼻先を掠める。
この匂いは桜の木からしているわけじゃないらしい。
‥もしかして木の後ろに何かある?
いつでも抜けるように刀の柄に手を添え、警戒しながらゆっくりと木の後ろに回り込むと、
「え?女子?」
一人の少女が木に寄りかかるようにして座っていて拍子抜けた。
薄く明るい茶色の長い髪が夜風にふわりと揺れる。
よく見れば、うつむいている少女の瞳は閉じられていて長い睫毛が影を作っていた。
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