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御堂君が私の手からチョコレートを受け取ろうとした瞬間――
「ツバキー! なんでメールを送っても返事くれねーんだよ! 俺、昨日から今日ずっと……」
公園の手すりを軽々と乗り越えて颯爽とやってきたのは晃くんだった。
連絡をしなかった私に対して憤りながら駆けて来たが、途中で喋るのをやめてしまった。足も止まった。
「あに……き?」
晃くんの手提げバッグから沢山のチョコレートが地面に落ちた。驚きを隠せないといった様子で途切れ途切れに言葉を紡いだ。
――兄貴?
「晃……?」
御堂くんも驚愕した様子だった。
私だって驚きを隠せない。
……今なんて言ったの?
私のチョコレートは受け取る寸前に現れた人物によって、私の本命チョコレートは誰にも受け取って貰えずにいるまま自分で持っている。
奪った人物は『兄貴』と言った。
今、晃くんは兄貴と言った。
兄貴とは……
「――も、もしかして……ご兄弟……ですか?」
「八戸さんと小学生の晃が知り合い?」
私の質問と御堂君の質問が見事に重なった。
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