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「ふ~ん。これで八戸椿ねぇ」
まだ難しい顔をしながら私の名前と向き合っている。
「よし覚えた。はちのへツバキな!」
早いとこ退散してしまおうかと逃げ腰になっている私に向かい彼は向日葵のような満面の笑みを浮かべてきた。八重歯が子供っぽさを演出している。
不安がる私の心配もその笑顔で吹き飛んでしまう。彼は憎めない性格をしているのだろう。その笑顔が物語っている。人を騙すようなタイプではなさそうだ。
「みどうってどういう字を書くのですか?」
その笑顔にノックダウンして頭がクラクラとしてしまいよろけてしまったが、
「おっと! 大丈夫かツバキ!」
身長が高いみどうさんの細くて長い腕に支えられ、胸元に頭が当たってしまった。何とも情けないが、こんなにも男性に接近したのは初めてで顔に熱が集まるのをこら
えきれずに、私は隠すように俯いた。
そしてまさかのいきなり名前呼び。
私の心臓はドキドキとしてしまう。
「ん? どうした?」
私の挙動不審な態度に、彼は顔を覗き込もうとしてきたものだから、慌てて離れて距離をとる。
「ツバキ、お前どこしょう?」
「どこしょうって……」
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