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俺は言葉に、口からその言葉を吐くこと自体が嫌で言葉を詰まらせていると、代わりとばかりに母さんがこう言った。
「柚葉ちゃんだって立派な女子高生だもの。彼氏くらい、1人や2人できてもおかしくはないわ」
と。
「うう……それを言うな」
俺は耳を塞ぐが、しっかりと脳裏に焼き付いている。
可愛らしい笑顔で知らない男と一緒に道路を歩いている姿を。1人や2人も居てたまるかよ。
「言うなってしかたがないでしょう。本当のことなんだから。私も聞いたわよ」
柚葉のお母さんに聞いたということだろう。
「いいわよね。青春をしているようで。わたしもお父さんとの出会いを思い出したわー」
「誰もそんなことは聞いていないし、柚葉のそれは間違った青春だ」
俺は過去を思い出して惚気だした母さんを無視して、母さんの言葉を全力で否定をしたが、
「じゃあそれならアンタは言ったの? 『柚葉ちゃん、君が好きです。付き合ってください』と」
「……言っていない」
「それならアンタが選ばれるわけないじゃない」
俺の小さな返答に母さんはふふんと鼻を鳴らして言葉を続ける。
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