ゆずハニー

14/83
前へ
/83ページ
次へ
俺は言葉に、口からその言葉を吐くこと自体が嫌で言葉を詰まらせていると、代わりとばかりに母さんがこう言った。 「柚葉ちゃんだって立派な女子高生だもの。彼氏くらい、1人や2人できてもおかしくはないわ」 と。 「うう……それを言うな」 俺は耳を塞ぐが、しっかりと脳裏に焼き付いている。 可愛らしい笑顔で知らない男と一緒に道路を歩いている姿を。1人や2人も居てたまるかよ。 「言うなってしかたがないでしょう。本当のことなんだから。私も聞いたわよ」 柚葉のお母さんに聞いたということだろう。 「いいわよね。青春をしているようで。わたしもお父さんとの出会いを思い出したわー」 「誰もそんなことは聞いていないし、柚葉のそれは間違った青春だ」 俺は過去を思い出して惚気だした母さんを無視して、母さんの言葉を全力で否定をしたが、 「じゃあそれならアンタは言ったの? 『柚葉ちゃん、君が好きです。付き合ってください』と」 「……言っていない」 「それならアンタが選ばれるわけないじゃない」 俺の小さな返答に母さんはふふんと鼻を鳴らして言葉を続ける。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加