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「なんでも早いもの勝ちよ。母さんだってお父さんに告白された次の日に別の男子に告白されたけれど、お父さんの方が早かったから断ったわ。今思い出しても後から告白してきた人の方が容姿はよかったけれどね」
俄かに信じがたいエピソードだ。
この太った母さんがモテるだなんて。
「それなら父ちゃんをふって、後から告白してきたカッコいい男子の方に行けばよかったじゃんか」
俺がこれを言えば、
「そうしたら今頃、柚葉ちゃんの幼馴染としてアンタは生まれてはこなかったよ」
お玉でもう1回叩かれる。
「それは嫌だ」
「ナルシストぶって気取った格好をして告白をしなかったアンタが悪いの。せいぜい、アンタは柚葉ちゃんにとって『幼馴染のお兄ちゃん』どまりよ」
「……俺は別にナルシストぶってなんかないし」
「その態度がナルシストぶってるって言うの。誰に似たんだか、なんの影響かは知らないけれど、父ちゃんも他の家族や親戚もよく喋るのに、どうしてアンタだけあまり喋らないのよ」
柚葉が愛読していて、自分も集めた漫画の影響とは言えずに、
「別に。知はつながっていても個性はあるものだろ」
もごもごと口ごもった返事になってしまう俺に、
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