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「この男児は1学年上にしなさい。そうすれば幸福は訪れる」
などと言われた結果らしい。
確かに俺は病弱だった体は幼児期だけで、後は特撮ヒーローごっこができる程の健康優良児に育った。
占い師などに言われなくてもそのように育ったことのように思えてしまう。
俺は悔やんでも悔やみきれない。
常にいつも隣に居た柚葉。
学校の帰り道、よく脱走をする大きな犬が居ると怖がって俺のシャツを掴む柚葉を庇いながら俺もビビりながらも柚葉を護り道を歩くことも多々あった。
そのシャツを掴む白魚のような手がとても可愛らしくて、
「やっぱり柚葉を護るのは俺しかいない」
としか思えなかった。
……だが、俺の学年は1学年早い。ずれている。
幼稚園の行事などに柚葉を連れて柚葉の両親も見に来てくれていて、演劇で王子様の格好をしている俺を見た柚葉が
「凛くん、本物の王子様みたい! かっこいい」
とビー玉のように大きな長いまつげで縁取られた薄く緑がかった瞳をキラキラとさせて、少し背が高い俺を見上げていったその言葉に、俺はじゃんけんで手に入れた王子様という役柄を心から幸運に感謝した。
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