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「柚葉、帰ろうか」
「うん」
俺は日が沈みかけ暗くなり始めたぬかるんだ地面を転ばないように、タイムカプセルの缶を持ち、柚葉の手を掴んでリードして歩こうとして、失敗して1人で転んでしまった。
「いってぇ」
「大丈夫凛くん」
「あ、ああ」
起き上がり立ち上がって再び歩き出す。片方の手でタイムカプセルを持ち、失敗したもう片方の手はポケットの中に入れて歩いた。
この方が俺らしいかもしれない。
無様な格好を見せてしまい情けない思いをして落ち込んでいると、
「凛くんはかっこつけている姿もかっこいいけれど、たまにはそういう姿も見せてよね」
「え、どうして」
「だってそんな凛くんも可愛くて素敵なんだもん」
戸惑う俺に柚葉は自分の両頬を両手で抑えてなにやら顔を赤らめる柚葉。
「嫌だ。情けない恰好を柚葉には見せたくはない」
「どうしてよ。だってどんな凛くんも凛くんには変わりがないじゃない」
柚葉が優しいことを言ってくれる。嬉しい。嬉しいにはかわりがない……だが、
「アイドルがトイレに行かないように俺は柚葉の前ではカッコつけていたいんだよ」
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