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柚葉の耳に届くか届かないかの声でそう言ったが、どうやらしっかりと聞こえてしまっていたようで、
「そうやって四六時中カッコつけていたら結婚生活持たないよー」
柚葉は俺の前に立つと、愛らしくウインクをしてきたものだから、俺の心は鷲掴みにされてしょうがなかった。
というか心停止してもいいような言葉を言われたような――
歩みを止める俺に、柚葉は、
「ポケットに手を入れて歩くなんて今までしたことがなかったのに、どうして今日から始めたの?」
なんて尋ねてくる。
俺は正直に言えるわけもなく、
「ただ……なんとなく」
と誤魔化すしかできなかった。流石に「クラスメイトの女子の亜衣恋菜のマネをしました」なんて口が裂けても言えない。
歩き出した俺に合わせて柚葉がくっついてくる。
「そういえば、凛くんのクラスのカッコいい女子の先輩、いつもポケットに手を入れて歩いていたよね」
顎に手を当てて斜め上を見ながらそう直球で言い当てた柚葉に俺は白旗を上げるしかなかった。
「その先輩とどういう関係? まさか彼女?」
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