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「違う。俺が勝手にマネをしただけです。お前こそ章太郎とかいう男とは一体どういう関係なんだよ。『好き』とか言っていたし、『好きと言ってくれる人ができた』とも言っていたし、まさか付き合っているんじゃないよな?」
いつの間にか到着していた我が家と柚葉の家の前。
辺りは街灯以外は真っ暗だった。いいタイミングで帰ってくることができてよかった。
俺と柚葉は互いの家の門に掲げられているライトの前で睨みあう。
「凛くん、私のこと、疑うんだ? 好きっていろんな好きがあるよね? 友達ができたっていう意味だよ」
柚葉がそう言えば、
「相手の男はそういう風には見えなかったぜ。柚葉は俺のことを疑うのかよ。俺は昔から柚葉一筋で――」
俺だって負けない……でも、
「そうやってポケットに両手を入れたまま歩かれたら私と手を繋げないじゃないの。ばかー」
俺の言葉を遮って柚葉はそう叫ぶと、自宅へと先に入ってしまった柚葉の言葉に俺は考えさせられた。
――そうか。柚葉は今俺と手を繋いで歩きたかったのか。
ポケットに手を入れていたからできなかったのか。
嬉しいことがたくさんありすぎて俺の気が回らなかった。これは完全に俺の負けだ。
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