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「しまった」
俺は柚葉と思い出のタイムカプセルを埋めて掘り出した日に、手を繋いで帰宅をするという最高の思い出になるチャンスを逃してしまったのか。
「ごめんな柚葉」
柚葉が入っていった柚葉の家の玄関に向かい深々と頭を下げると、俺は自宅へと入っていった。
気が付かなくてごめん柚葉。
明日からはポケットには手は入れない。
だから俺と一緒に手をつないで歩いてください。
俺の世界中でたった1人のお姫様。
……だが、どうしてベランダで告白をしたときに「無理」と言われたんだ?
風呂に入りながらそんなことをずっと考えてしまう。
「あの時なんて言った? 『今は』と言わなかったか? だったら今度はいいのか? ううう。女心がさっぱりわからない」
俺は風呂でのぼせそうになりながらしばし考えを巡らせるが、いくら考えても長い付き合いとはいえ、今まで柚葉の想い人さえわからなかった俺にはまったくもって見当がつかなかった。
「さて。風呂に入ったはいいが、謝罪の電話をかけるか否か。柚葉も風呂に入っているだろうしタイミングが難し、い……柚葉の風呂――」
「あー、凛兄ちゃんが鼻血を出して倒れたー。お母さーん」
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