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「一ノ瀬くんっていつもいい香りがするよね」
などとはしゃいでいた女子の会話が聞こえてきて、俺の努力が間違っていないことを証明してくれて小さくガッツポーズをした。特に体臭だけは自分ではわからない。
自分で自分のにおいがわからないし友人同士でも指摘しにくい会話なのでとてもありがたかった。
教室には入れなかったが、どうやらその後も俺についての会話もしているようで、
「一ノ瀬くんかっこいい」
とか
「眉目秀麗、生成期優秀」
「判断力も行動力もある……」
「しかも口数が少なくクールで少しミステリアスな雰囲気を纏っている」
「最高じゃないのー」
「きゃー」
などとはしゃぐ会話が聞こえてきた俺は、さも今到着したかのように無言で教室のドアを開けると、賑やかに騒いでいた女子達は気まずそうな表情を浮かべて黙り込んでしまい、俺はそれに気が付いていないふりをしながら机の中とロッカーから忘れ物をとると無言で退室をした。
すると、
「やっぱり素敵ー!」
なんていう声が聞こえてきたので俺は内心まんざらでもなかったが、それは君達の為ではない。
全ては柚葉の為に生きている。
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