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なにものにも代えがたい、剥き出しの自分。
それを認め合えた関係って、なんて素敵なんだ。これほど素敵で、価値があるものはない。
(良かったね)
晶斗は、もう一度、心の中で、二人に言った。
そこに、妬みも嫉妬も恨みもない。あるのは一抹の寂しさ。それも、ほんのそよ風程度に流れてくるだけだ。時が経てば、その寂しさも去ってゆき、美しい景色の思い出だけが残っていく。
(さようなら)
晶斗は、何かと別れを告げた。
奈津を見送ってから自分が別れ上手になったと思った。晶斗は、自分を褒めたいくらいだ。
「俺たちが出たあと、お前はどうする?」と冬馬。
「あー。引っ越しする金がないから、居座るよ。先住民として」と晶斗。
「じゃあ、管理会社にはそう言っておく」と冬馬。
そうして、晶斗と冬馬は少し見つめ合ってから、お互い頷きあった。
話が済んで、冬馬と遥子がリビングダイニングから出て行こうとしたとき、晶斗は冬馬を呼び止めた。
遥子が先に行ったのを確認すると、晶斗は
「パンドラの箱は、開いたの?」
と冬馬に訊いた。
「いや。これから」
「…そっか」
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