33 さようなら

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 晶斗は、冬馬が遥子と険しい道を進もうとしていることを知った。その先に来るかもしれない嵐を冬馬は耐えられるのだろうか。 (いや。トーマは分かっている…) と晶斗は思った。  冬馬は、パンドラの箱の中には厄災が詰まっているのを分かっているのだ。自ら嵐に向かっていくのは、その先にあるものを遥子と見たいからなのだ。その先に、人として生まれたことの真実があると、冬馬は信じているのだ。  その気概こそ、冬馬の核であり、冬馬の輝きだった。晶斗が好きな冬馬だった。    晶斗は眩しいものでも見るように、目をぱちぱちと瞬きして、 「…応援している、としか言えないけど。頑張ってね」 と言うと、冬馬は今までで見た最上の笑顔で、 「ああ。ありがとう」 と言った。   (了)
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