8人が本棚に入れています
本棚に追加
晶斗は、冬馬が遥子と険しい道を進もうとしていることを知った。その先に来るかもしれない嵐を冬馬は耐えられるのだろうか。
(いや。トーマは分かっている…)
と晶斗は思った。
冬馬は、パンドラの箱の中には厄災が詰まっているのを分かっているのだ。自ら嵐に向かっていくのは、その先にあるものを遥子と見たいからなのだ。その先に、人として生まれたことの真実があると、冬馬は信じているのだ。
その気概こそ、冬馬の核であり、冬馬の輝きだった。晶斗が好きな冬馬だった。
晶斗は眩しいものでも見るように、目をぱちぱちと瞬きして、
「…応援している、としか言えないけど。頑張ってね」
と言うと、冬馬は今までで見た最上の笑顔で、
「ああ。ありがとう」
と言った。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!