欲に溺れる

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 新しくできたところだろうか。見たことがないお店だった。しかし、他に雨宿りできるところはなさそうなので、私は取り合えずその店に入ることにした。  果たして中は暖かかった。雨で冷えてしまった肌にやんわりとした空気が触れる。 「いらっしゃいませ」  カウンターの方から眼鏡をかけた私の祖父くらいの年齢であろう店員が顔を出した。  いや、店長か。  よくよく名札のところを見ると『柴咲 店長』と書かれてある。 「すみません。急に雨が降ってきてしまって……。雨宿りしてもいいでしょうか」 「もちろんです。何か飲んでいきますか?」
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