プロローグ

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プロローグ

 雲一つない良い天気じゃ。じゃが、この空にはもうドラゴンは飛ばず、地上を魔法使いが歩くこともなかろう。わしはまだ昨日のことのようにあの頃を覚えておるのじゃが。  魔法使いは城に隠れ、古い友も皆、魔法使いの庭に行ってしもうた。わしもそろそろ旅立とうと思う。  のう、お若いの、席を同じゅうしたよしみじゃ、このじいの昔話に付きおうてはくれぬか。  ドラゴンと人間の血を引く姫君の話じゃ。わしが誰よりも愛した心やさしい姫君。名をアステル・リーブルという。そう、ドラゴンの女王メリダの孫娘、その名跡を継いだ姫君じゃ。  目の色を変えたの。わしの姫を知っておるのか? そうか。うれしいことじゃな。  女王メリダが凶暴なドラゴンども抑え、五百年の長きに渡る平和がもたらされておった頃のことじゃ。  朽ちかけた古いハープを爪弾くとあの日々が蘇ってくるかのようだ。もう三百年ほどが過ぎる。
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