第2話 vsお菊さん

1/3

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ

第2話 vsお菊さん

「ねぇ、聞いてよムジナ!」  ある日、シフは一枚のプリントを手にムジナの方へと歩いてきた。コピーではなく手書きで、さらに何が書いてあるのかがわからない。  そう、田舎以上に田舎なのがここ、魔界だ。  なので文字は普通の人間には読めない。なのでいつも人間でも読めるような文字に書き直すのがヘラの仕事だ。 「何だよシフ。聞いてるぞ」 「明日、調理実習があるんだけど、エプロンない?」 「無い!あ、でもヘラなら作れるかも。でも一日で完成するかな?」 「そんな不可能なことを可能にするのが、この俺だ!」  妙なポーズをしながら降りたったのは、全体的に赤いヘラ・フルールである。彼の普段のキャラからして考えられない動きだ。 「……何か来た」 「うん……」 「お前ら冷たすぎだろ。で、エプロンか?柄は何でもいいんだな?」 「うん、ありがとう!」 「いいってことよ!」 ──────────  次の日。 「ほんとに完成させちまうなんてな」 「どうだ、俺の実力は!」  ヘラは胸を張る。  エプロンを受け取ったシフは嬉しそうに抱き抱えた。 「すごいよ!じゃ、行ってきまーす!」 「「行ってらっしゃーい」」  駆け足で去っていく背中を見届けた二人の男は静かにハイタッチした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加