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「やっぱり柚菜ちゃんだー。あれ、崎下くんもいる?」
「よー、金島」
崎下が右手を挙げて応えた。
「……あれ、もしかして私、お邪魔しちゃった!?」
野々華ちゃんが途端にあわてふためいて、手に持っていた紙コップを震わせている。
こういう風に慌てることあるんだ、あの野々華ちゃんが。
「あ、ううん。大丈夫だよ。崎下とはたまたま会って、ついでだからここで飲んでただけで……」
「あ、そうなの? よかったー。てっきりデートの邪魔しちゃったかと思ったー」
野々華ちゃんの震えが止まってへにゃーっと安心したように笑う。緊張がとけたようだ。
というかデートなんて、そんな直接的なワードを出されるとは……。崎下のやつどう思ったかな……。
ちらっと崎下の方を見ると、ちょっとムッとしてる。
え、何で? ……あ、もしかして、私とデートって思われたのが嫌だったのかな。
やっぱり、私の勘違い?
「それより二人して何を……」
野々華ちゃんの声のトーンが落ちる。視線がテーブルの方に向いている。え、ちょっと待って。
「!?」
やば、シャンシャンのパンフレット。
「こ、これってまさか……?」
あー、終わった。ぬいぐるみ好きにはたまらないシャンシャンだけど、そうでない人にとっては引かれるかもしれない。
夏休み終わったら学校行くのが気まずくなる。どうしよう。
すると、野々華ちゃんが急に紙コップ片手に鞄の中をゴソゴソとしだした。
「柚菜ちゃん!」
「な、何?」
バッと見せられたのはスマホの画面、の……。
「え、これもしかしてシャンシャン!?」
野々華ちゃんがゆっくりと大きく頷く。
「え、野々華ちゃんってシャンシャン好きだったの?」
「実は……」
スマホと紙コップを下ろして頬を赤くして俯く。
ええ、うそー!
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