好きなんだからいいじゃない

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 私たちはシャンシャン館に来た。  前に、お城の門番みたいにかっちりした服装で何故か槍の代わりに虫取り網を持っている男の人。兜っぽいのを被ってて、目は見えない。 「ダメです」 「ええ、何でだよ!」  崎下が騒ぐ。まあ、イベント時間過ぎちゃったからだけど。  私も応戦する。 「ほんの少しでもいいんです。この子イベント参加できなかったんで、シャンシャンほんの数秒だけでもいいから触らせてあげてくれませんか?」  だけど、門番虫取り男は首を横にブルッブルッと振るだけ。 「ダメったらダメです。時間切れです。もうおしまいです。そんなに来たかったのならどうして時間内に参加しなかったのですか?」 「それは……」  これって私が言っていいことなのかな。野々華ちゃんを横目でちらっと見る。俯いて、まるで欲しいおもちゃを買ってもらえなかった子供のようだ。 「シャンシャンが本当に好きなら、時間内に来るものじゃないんですか? あなた本当にシャンシャンが好きなんですか?」  その言葉に、俯いて暗い顔をしていた野々華ちゃんの顔がさらに暗くなる。 「ふん、所詮はその程度なのでしょう。さっさと帰ることですね」  ムカリ。さすがに、さすがにちょっと堪えられそうにない。  私は言い返してやろうと思って口を開きかける。  でも。 「あ、あの……!」 「野々華ちゃん?」  野々華ちゃんが俯いていた顔を上げて、しっかりと門番虫取り男を見つめる。 「あの、私シャンシャンが好きです。でも、恥ずかしいって気持ちもありました。それは、本当にごめんなさい……」  野々華ちゃんが門番男に頭を下げた。  野々華ちゃん……。  門番男を見ると、じーっと野々華ちゃんを見ている、のかな。何を考えているのか、目が見えないから表情が読めない。  野々華ちゃんが遠慮がちに顔を上げる。 「あの、イベント時間過ぎちゃったから、見せてくれとは言いません。ただ、私本当にシャンシャンが好きで、だからいつも応援してて、その気持ちは本当です。だから……」 「だから、何ですか?」  冷たく響く門番男の声。でも、野々華ちゃんは遠慮がちな顔を凜とさせ、まっすぐ背筋を伸ばしてはっきり言った。 「だから、私の気持ちを否定しないでください」  いつも綺麗だと思っていた野々華ちゃんだけど、今日が今までで一番綺麗だと思った。
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