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「うわあ、シャンシャンだ!」
崎下が歓声を上げる。右隣を見ると、野々華ちゃんがシャンシャンを見て頬を赤らめる。
本当はすごくすごく来たかったんだね。
お兄さんがシャンシャンの元へ行く。そして野々華ちゃんに呼びかける。
「野々華。こっちにおいで」
「え……」
野々華ちゃんはハッとした顔をして、そのまま動かない。動かないというか、動けないのかな。
私は野々華ちゃんの手を引いてシャンシャンのいる場所まで歩く。
「あ、柚菜ちゃん……」
「大丈夫。一緒に行こう」
「……うん」
柔らかく微笑む野々華ちゃん。左隣の崎下にも目配せすると、待ってましたと言わんばかりに歯を見せて笑ってる。
「やあ、みんなよく来たね。今日はシャンシャンに会いにきてくれて、どうもありがとう」
シャンシャンの手が野々華ちゃんに触れると、野々華ちゃんの目から涙が溢れる。
「……シャンシャン!!」
野々華ちゃんがシャンシャンに抱きついた。すごくすごく嬉しそう。
「……あのね。本当はさっきお兄ちゃんがシャンシャンを作ったって聞いて、やっぱりそうなんだって思ったの」
「え?」
お兄さんが驚いた声を上げた。
「だって、シャンシャン見てたら、お兄ちゃんがくれたぬいぐるみをいつも思い出すんだもん。全部家に置いてあるけど……」
「シャンシャンは、野々華のために生まれたんだよ」
野々華ちゃんがお兄さんの言葉に顔を上げる。
「小さい頃みたいに、ぬいぐるみと無邪気に遊んでいた野々華が、また無邪気に遊べるようにって、そういう気持ちが込もってるんだ」
「お兄ちゃん……」
そっか、それでさっきここが野々華ちゃんのために作った場所って言ったのか。
「ありがとう、お兄ちゃん」
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