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暗い部屋でソファーに座り、テレビを見つめる男は画面に映る幸せそうな二人をぼんやりと眺めていた。大勢の仲間と家族に祝福され、ヴァージンロードを歩く二人の婚礼は、男の目には眩しく映る。
「はぁ……」
溜め息混じりに男が顔を手で覆うと、映像がプツリと途絶えた。
「可哀想だね」
その声に男は顔を上げると、男の隣には歳の離れた少年が膝を立てて座っていた。小学生くらいだろうか。少年を見つめた男が口を開く。
「何がだ……?」「言わなくても分かるでしょ?」
少年は何も映らないテレビを見つめたまま呟いた。
「オレの事かい?」
男が少年に訊ねると、少年は振り返り男を見つめる。
「それ、本気で言ってるの?」
ジトリと見つめる少年に、男は自身の髪をくしゃりと掻いた。少年は呆れた顔でテレビを指差す。
「あのヒト達だよ」
テレビには先程の婚礼が突然映り、また幸せそうな二人が現れた。男はその映像を見ながら少年へと訊ねた。
「何処が可哀想なんだ?あんなに幸せそうじゃないか……」
笑顔で映る花嫁を細めた瞳で見つめる男に、少年はムスッとしながら告げる。
「可哀想だよ。だってあのヒト達は分かっていないんだ」「何を?」
男が少年に訊ねると、少年は唇を釣り上げて呟いた。
「アンタを裏切った罰が下る事を……」
男が少年を見つめると、急に砂嵐に変わったテレビ画面にとある映像が映し出された。
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