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「は、はじめまして……」
視線を合わせず挨拶をする子供に男は首を傾げる。
「キミ、何処かで会った事あるかい?」「え……」
男がふと子供に声を掛けると、子供は不思議そうな顔をした。しかし、それからすぐに顔を反らして小さく呟やいた。
「多分……ない、けど」「そうか。じゃあ、勘違いだね」
男が笑うと、子供はじっと男の顔を見つめた。
「これ、つまらない物ですが……」「わざわざスイマセン。有難う御座います」「これから失礼お掛けしますがよろしくお願いします」「いえいえ、こちらこそ」
夫婦は手土産を男に渡し、頭を下げて帰って行った。その時、母親にしがみついていた小さな子供が男へと振り返り、小さく手を振った。
「バイバイ、またね!」
クスリと笑うその顔に男はあの日の夢を思い出す。
「まさか……な」
手を振り返す男は、夢の少年と子供を重ねて何とも言えない顔で笑うのだった。
終
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