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 俺をまっすぐに見ながら言う部長は、少し心配そうで。辞めようとしてるヤツの今後のことなんか、心配しなくてもよさそうなもんなのに。マジでこの人はいい上司だよな。 「今日、内定もらいました」  真顔のまま言うと、部長は唇だけで笑った。 「今日か、行動が早いじゃねえか」 「すみません、三月いっぱいで辞めさせていただきたいです」  俺が言うと、部長はニカッと笑った。俺も好きな、いかにも豪快なこの人らしい笑顔。 「若いのに立派だな、お前」  部長にそう言ってもらえて、とりあえずほっとした。一口飲んだビールが、やけにうまい。  おでんの盛りあわせが二皿運ばれてきた。見るからに味が染みてそうな大根や卵、餅巾着にちくわぶ、はんぺん。うまそうな匂いに腹が反応する。 「ほら、遠慮なく食え。うまいぞ」  部長が大根を箸で二つに割り、ふうふうしてから頬張る。本当にうまそうに食う。
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