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 部長のマネしてまず大根を食いながら、俺はなんだか泣きそうになっちまった。大根がとろけるようで、身体に染み渡る。うまい。 「はい。部長のアドバイス、役に立ちました」  満足そうにうなずく部長。でもな、とうつむきながら急にさみしそうな声。餅巾着を箸でいじる。 「俺はお前にマジで期待してたし、うちで出世して欲しかったなあ。もう、一つの会社にしがみつく時代じゃねえけどよ」 「俺も最初はそのつもりだったんで、もう部長の下で働けないことは残念です」  これはリップサービスでもなんでもねえ、俺の本音だ。新卒で就職して初めての上司がこの人で、本当によかった。  でも俺には、いつか社長になる清文を支えたいって人生の目標ができた。もしこれが、早まった、やっちまったなってことになっても、後悔はしねえ。清文を真剣に好きになって、行動した結果だから。 「うれしいこと言ってくれるじゃねえか」
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